ニジェール基礎教育開発:質向上に向けた政策開発アプローチについて

寺野 摩弓 (国際教養大学)

ニジェール国は 1960 年の独立後の発展に向けた様々な取組みを進めてきた。教育においては、イ ンフラと人的資源開発に対する試練に対し、基礎教育へのアクセス拡大などが優先事項として取り 組まれてきた。同国では現在、15 歳以下の若年人口は全体の半数以上を占め、現在では年率 3%以 上の速度で人口は拡大しており、修学年層は 2008 年から 2020 年の間で 1.5 倍に増加すると予想さ れる。現在まではそういった重要に対し、教育機会と就学率などの着目した量的拡大への取り組み が中心であった。しかし 2003-13 年の教育開発 10 カ年計画( PDDE)のもとに、修了率や学習効果 向上などに注目した教育の「質」の改善のための対策が各機関の連携により進められている。 教育の質は、初等教育の普遍化、成人の識字、ジェンダー格差と並び、万人のための教育 (Education for All)の目標達成に向けた指標(Education for All Development Index-EDI) としても用い られている。JICA 基礎教育課題別指針(2005 年)によれば、「不十分な質の教育は、中途退学や留 年を累積的に増加させ、経済的・社会的な浪費」を引き起こし、さらに「児童・生徒や親の就学意 欲を失わせ、就学率の向上そのものを阻害することにもなりかねない」と議論されている。実際、 同国においてはその教育投資の非効率性が問題視されており、例えば 2011 年の教育投資は GDP の 4.5%を占め、サヘル地域平均の 3.4%を上回り、初等教育投資ではニジェールは 2.5%、サヘル地域 平均は約 1.73%である。その一方、純就学率、若者層識字率、学校修了率において地域平均を下回 っている(ユネスコ統計局 2011 年データによる)。 教育の質向上には教員、教材、学校施設拡充を含めた学習者の環境改善に向けた総合的アプロー チが必要であるが、JICA は同国の教育改善に向け、小中学校の施設の改善貢献などハード面の貢献 に加え、技術支援プロジェクトを通して学校の施設運営能力の向上、教育効果改善に向けた教材や 教育方法開発にも取り組んできた。その中でも国政府、ならびにコミュニティーのオーナーシップ を尊重し、そしてローカルリソースを積極的に活用するための協力として、みんなの学校プロジェ クト(SFA)が代表的である。それは上記 PDDE の一環として政府が進める学校運営委員会(COGES) の強化に視点を置いた技術支援である。SFA は 2010 年秋、第 2 フェーズの一環として「質の改善に かかる学校活動計画」を導入したが、それは学力向上につながる教育と COGES の補助金運営管理能 力強化の 2 側面をもち、補助金を効率的・効果的に学習の質の改善に結びつける、すなわちインプ ットとアウトプットの繋がりを強化する目的をもつ。これは特に COGES 開始当初より関連事業に参 加してきた世界銀行の継続的融資獲得のために重要な意味をもち、今後、UNICEF 等を含めた、 COGES 関連他援助機関のプロジェクトへの期待、特に教育の「質」に関する理解、対応を明らかにす ることは JICA の同国の援助にとって重要な考慮事項となっている。 本発表ではこういった流れに見られる教育援助における「質」の各機関の理解や対応についての調 査結果を報告する。またそれらについて最近注目される経済性、効率性、効果、価値ある投資 (Value for Money)等の関連概念の分析と絡め、同国の教育政策のあり方との関連性ついて考える。

Y-4-4.寺野摩弓.pdf

(Education for All)の目標達成に向けた指標(Education for All Development Index-EDI) としても用い. られている。JICA 基礎教育課題別指針(2005 å¹´)によれば、「不 ...

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